森次医院では海外赴任、出張、留学、ボランティア、観光旅行など、海外旅行の予防接種や健康相談などを専門に行い、往診にも対応しています。

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海外渡航者が出発前に予防接種を受けることは感染症から身を守るために大切なことです。ここでは海外旅行時によく使用されるワクチンだけでなく、出来るだけ多くのワクチンを解説したいと考えています。日本ではなじみのない多数のワクチンが海外で使用されています。このような日本で認可されていないワクチンについても、順次、情報を追加する予定です。


海外渡航時によく使用されるワクチンの一覧表
コレラワクチン
(Cholera Vaccine)
A型肝炎ワクチン
(Hepatitis A Vaccine、HepA)
B型肝炎ワクチン
(Hepatitis B Vaccine, HepB)
狂犬病ワクチン
(Rabies Vaccine、Rabies)
日本脳炎ワクチン
(Japanese Encephalitis Vaccine, inactivated、JapEnc)
破傷風トキソイド
(Tetanus Toxoid、TT)
ジフテリア破傷風
混合トキソイド
(Diphtheria and Tetanus Toxoid Children’s Dose, DT)
髄膜炎菌ワクチン
(Meningococcal vaccine)
ダニ媒介性脳炎ワクチン
(Tick-born Encephalitis Vaccine、TBE, FSME)
腸チフスワクチン
(Typhoid Fever Vaccine、Typhoid)
黄熱ワクチン
(Yellow Fever Vaccine)
ペストワクチン
(Plague vaccine、Plague)


 
コレラワクチン(Cholera Vaccine)
 
1.経皮コレラワクチン(Parenteral Cholera Vaccine、Cholera)

日本では(社)北里研究所が製造しています。コレラ菌(稲葉株と小川株)を純粋培養して生理食塩液に浮遊し、加熱法で不活化した製品です。製剤1mL中に不活化コレラ菌稲葉株が40億個、小川株が40億個、計80億個含まれ、防腐剤としてフェノールが添加されています。接種対象年齢は生後6か月以上です。接種は皮下に5〜7日間隔で2回行います。1回目の用量は、4歳未満0.1mL、4〜6歳0.25mL、7〜12歳0.35mL、13歳以上0.5mLです。2回目はそれぞれ、0.25mL、0.5mL、0.7mL、1.0mLです。6か月間隔で2回目の各用量による追加が行われることがあります。
このワクチンの効果は限定的です。2回受けた後の効果は約50%とされ、持続期間は、3〜6か月とされています。副反応として、稀に、局所の痛み、発赤、腫脹、硬結など、及び、発熱、倦怠感などの全身反応などが現われることがありますが1〜2日で消失します。このワクチンは広く世界で使用されてきましたが、最近、予防効果が低いので一般の旅行者にはお勧めでないとされています。災害地の救助活動などに出かける場合などには必要でしょう。外国ではWyeth-Ayerstなどが製造していましたが、現在、入手できないようです。

2.経口コレラワクチン(Oral Cholera Vaccine、CholeraOral)

スエーデンのSLBVaccinesの製品(Dukoral)が欧州連合その他で販売されていますが、日本、米国などでは未承認です。使用されているコレラ菌は稲葉株(classical biotypeとEl Tor biotype)と小川株(classical biotype)の3種類です。各株は純粋培養後に加熱法とホルマリン法で不活化され、粘膜免疫増強剤として組換えコレラ毒素Bサブユニット(rCTB)が添加されています。ワクチン液3mL中に、加熱不活化小川株25億個、ホルマリン不活化小川株25億個、加熱不活化classical biotype稲葉株25億個、ホルマリン不活化El Tor biotype稲葉株25億個、合計100億個、及びrCTB1mgが含まれます。約150mLの冷水を入れたコップに添付の発泡剤(炭酸水素ナトリウム)を溶かし、ワクチン液を混ぜて飲用します。接種対象者は2歳以上、回数は、6歳以上は1週間間隔で2回、2〜5歳は3回です。6歳未満の場合は発泡剤を溶解後に半量を捨て、残りの75mLにワクチン液を加えます。接種前1時間と接種後1時間の間は、飲食、経口医薬品の服用などが禁止されています。追加接種は2年後に1回行います。このワクチンを受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。
Dukoral接種後のコレラの発症阻止率は約85%とされています。コレラの予防に加え、毒素原性大腸菌(ETEC)下痢症の阻止率が約60%、旅行者下痢症の阻止率が23%とされています。このワクチンは日本で認可されていませんが、災害地の救助活動などに参加される場合には適当と思われます。胃の摘出手術を受けた患者、胃酸の分泌が少ない人などにもお勧めです。

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A型肝炎ワクチン(Hepatitis A Vaccine、HepA)
 

日本では化学及血清療法研究所がエイムゲン(A Immugen)を製造しています。海外にはHavrix (GlaxoSmithKline Biologocals Inc)、VAQTA (Merck & Co. Inc)などの製品があります。日本の製品も海外の製品も細胞培養を利用した精製不活化ワクチンです。外国の製品は液剤で免疫誘導力(力価)を強化するためにアルムニウム塩が添加されています。日本の製品は凍結乾燥製製剤です。1mL中の不活化A型肝炎ウイルス抗原量は1マイクログラム(mcg)です。アルミニウム塩は添加されていません。日本では16歳以上が接種対象者とされていますが、外国では生後12か月以上です。日本の製品は接種直前に注射用水0.65mLを加え、溶解して使用します。接種量は0.5mL(0.5mcg)、接種部位は上腕の皮下又は筋肉内です。通常、2〜4週間隔で2回接種し、6か月以上経過後に追加します。A型肝炎ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。
血中抗体は初回接種の2週後から出現します。陽転率は99%以上です。初回接種の1か月後の抗体価は血液1mLあたり50〜500ミリ国際単位(mIU)ですが、6か月後には3〜100mIUまで低下します。最低感染防御抗体価は1〜2mIUとされているので、1回接種により6か月間以上の予防効果が期待されます。初回接種の2〜4週後に2回目の接種を受けると平均抗体価が300mIUに上昇し、約2年間予防効果が持続します。6か月後の3回目接種により約3000mIUまで上昇し、予防効果が10年以上持続するとされています。Havrixは初回後の陽転率が80〜100%、抗体価が約300mIUとされ、6か月後の2回目接種後に約4000mIUまで上昇します。VAQTAも初回接種後の抗体陽転率が90%以上、抗体価が約50mIUです。6か月後の2回目により6000mIUまで上昇します。HavrixとVAQTAの発病阻止率は100%、2回後の抗体持続期間は10年以上です。最近、日本の製品についても6か月間隔2回接種法が検討され、3回接種を上回る良好な成績が得られています。
A型肝炎ワクチンによる重大な副反応はありません。軽い副反応として、注射局所の発赤、腫脹、痛みが現われるとか、発熱、発疹、倦怠感などの全身症状が現われることがありますが、何れも軽症で、頻度は100人に5人未満です。外国製品の副反応は、注射部位の症状が100人に10〜50人、全身症状が5〜15人とされています。これらの副反応は、通常、2〜3日で消えます。
日本ではA型肝炎の発生が稀で、現在、55才未満の95%は抗体を持っていません。65歳でも半数以上が陰性です。海外に出かける際には、赴任者、旅行者を問わず、予防接種が必要です。2回受けて海外赴任された場合は1〜2年後の一時帰国などの際に3回目を受けるのが良いでしょう。短期の旅行者は1回受ければ十分です。帰国後、約6か月以上経過後に、次回の渡航に備えて2回目を受けるのがよいでしょう。米国その他の多数の国では小児の定期予防接種が行われています。

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B型肝炎ワクチン(Hepatitis B Vaccine, HepB)
 

日本には化学及血清療法研究所(化血研)のビームゲン(B Immugen)、明治乳業の沈降B型肝炎ワクチン「明乳」などの製品があります。萬有製薬がMerck & Co.社が製造したヘプタバックス‐II(Heptavax-II)を国内で販売しています。化血研と万有製薬の製品は組換え酵母由来のHBs抗原粒子が原料です。Engerix-B (GlaxoSmithKline Biologicals)、Recombivax HB(Merck & Co.)などの外国の製品も組換え酵母由来ワクチンです。明治乳業の製品は肝癌由来細胞培養由来のHBs抗原粒子を原料とする特異な製品です。B型肝炎ワクチンは、最初、持続感染者の血液から小型HBs抗原粒子を分離精製して作られていました。この血液由来製品は、感染性因子を不活化する必要があり、ホルマリン処理が行われ、免疫誘導力を強化するためにアルミニウム塩が添加されていましたが、現在の組換えワクチンもホルマリン処理とアルミニウム塩添加が行われています。
B型肝炎ワクチン1mLの抗原蛋白量は20マイクログラム(mcg)です。外国では出生直後から使用されますが、日本では生後2か月以上が接種対象です。接種量は、10歳以上は0.5mL(10mcg)、10歳未満は0.25mL(5mcg)です。接種部位は上腕の皮下又は筋肉内です。通常、4週間隔で2回接種を受け、5〜6か月後に追加を受けます。B型肝炎ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。
抗体陽転率は、1回接種後が約15%、2回後が70〜75%、3回後が約95%です。人口の約5%がB型肝炎ワクチンに対する低応答群なので抗体陽転率は100%に達しません。抗体価は血液1mL当りの国際単位(mIU)で表されます。2回接種後は約10mIUですが、3回目後は、皮下の場合は約500mIU、筋肉内は約900mIUです。3回接種後、約5年間、抗体が持続します。
接種後、注射部位に、発赤、腫脹、痛みなどの症状が現われることがあります。また、発熱、発疹などの過敏症状とか、頭痛、倦怠感などの全身症状が現われることがあります。いずれも軽症で、頻度は100人に5人未満です。出現した場合も、通常、2〜3日で消退します。添付文書には多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)、急性多発性脳脊髄炎(Acute Disseminate Encephalomyelitis、ADEM)などの重大な副反応が警告されていますが、米国での接種後調査によりMSは関連性が無いとされています。ADEMも関連性が薄いと思われます。
海外に滞在される人はB型肝炎の予防接種が必要です。日本ではB型肝炎キャリアー妊婦から生れた児以外は任意接種ですが、世界の多くの国で定期接種が行われています。米国などではB型肝炎の予防接種を受けていないと入学が許可されないことがあります。出発までに6か月の余裕が有れば3回受けることが出来ますが、余裕が無い場合には2回まで済ませ、3回目は赴任先で受けることになります。

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A型肝炎・B型肝炎混合ワクチン(Hepatitis A and Hepatitis B combined vaccine、HepAHepB)
 

旅行者用のワクチンです。日本では入手出来ません。海外で接種を勧められることがあるかもしれません。

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狂犬病ワクチン(Rabies Vaccine、Rabies)
 

狂犬病ワクチンは細胞培養を利用してウイルスを増やし、精製不活化して作られています。ヒトの二倍体細胞を利用するHDCV(Human diploid cell Vaccine)、ニワトリ胚細胞を利用するPCEC(Purified Chick Embryo Cell Vaccine)、アカゲザルの二倍体細胞を利用するRVA(Rabies Vaccine Adsorbed)の3種類があります。HDCVとPCECは凍結乾燥製剤で、RAVはリン酸アルミニウムが添加された沈降製剤です。日本では化学及血清療法研究所がPCECを製造しています。外国にはSanofi-Aventis.のImovax(HDCV)、Novartis VaccinesのRabAvert(PCEC)などがあります。RAVは製造が中止になり入手できません。
接種対象については特に規定されていませんが、暴露前接種を開始する目安は、親の手から離れて一人で歩きたがる頃でしょう。接種直前に注射用水で溶解し、上腕部に1mL接種します。日本の製品の添付文書には皮下に注射すると記載されていますが、外国では筋肉内接種です。暴露前接種に限り0.1mLの皮内接種が行われる場合もあります。日本と外国では暴露前の接種方法が違います。日本では4週間隔で2回接種し、6〜12か月後に3回目が行われますが、外国では、7日間隔で2回接種し、3回目は21日後又は28日後に行われます。接種間隔と回数は皮内接種の場合も同様です。暴露後接種も、日本では皮下注射とされていますが、外国では筋肉内注射です。暴露後接種は、咬まれた当日に抗狂犬病免疫グロブリンとワクチンの同時接種を受け、その後、3日目、7日目、14日目、28日目の4回追加を受けます。米国連邦政府の疾病制御センター(CDC)は、暴露前接種を受けて狂犬病抗体が陽転していれば、暴露後接種は咬まれた当日と3日目の2回行うとしています。狂犬病ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。
日本のPCECワクチンの添付文書には2週間隔で2回接種後に抗体陽転率が100%、平均中和抗体価が105倍であり、6か月後に、それぞれ40%、11倍まで低下したが、3回目の追加により、それぞれ100%及び170倍に上昇したと記載されています。感染防御に有効な最低中和抗体価は5倍とされているので、40%の人に6か月間予防効果が持続すると考えられます。4週間隔で2回接種を受けた場合には、より強い抗体が作られるので、40%以上の人が6か月以上持続する免疫を獲得すると判断できます。3回目の接種を受ければ更に強い免疫が作られるので、長期間有効になります。抗体が消失した後で咬傷事故に遭遇した場合にも、免疫記憶が残っているので、暴露後の追加接種により迅速に抗体が上昇します。
HDCV、PCECなどの細胞培養ワクチンにはMSとかADEMなどを誘発する危険性はありせん。接種を受けた後に、痛み、発赤、腫れ、痒みなどの局所症状とか、頭痛、吐き気、腹痛、筋肉痛などの全身症状が現われることがあります。頻度は、100人に6〜10人程度、持続は2〜3日です。蕁麻疹などの過敏症状は極めて稀です。
日本では飼い犬の予防接種とか動物検疫などにより狂犬病は絶滅しましたが、多数の国では野生動物とか飼い犬の狂犬病が発生しています。狂犬病が存在する地域では、予防接種を受けている飼い犬を除けば、咬み付いた動物の約半数が感染動物とされています。イヌ、ネコ、サル、キツネ、アライグマ、リス、コウモリなどに咬み付かれた場合には出来るだけ早急に、抗狂犬病免疫グロブリンとワクチン接種を受ける必要があります。町から遠く離れた場所で咬まれた場合には、当日中に免疫グロブリン注射を含む適切な処置が受けられないかもしれません。また、脳由来の旧型ワクチンとか動物由来の抗血清による治療を受けることになるかもしれません。狂犬病は非常に危険な病気なので、流行地への赴任者、個人旅行者、エコツアーの参加者などは暴露前接種がお勧です。狂犬病のリスク国に1年以上滞在される場合には3回目の追加接種が必要です。

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日本脳炎ワクチン(Japanese Encephalitis Vaccine, inactivated、JapEnc)
 

現在使用されている日本脳炎ワクチンは感染マウスの脳乳剤からウイルスを抽出精製、不活化して製造されています。脳由来ミエリン蛋白含量が2ng/mL以下の高度精製品です。この製品は、韓国、台湾、タイ、マレーシア、スリランカ、ベトナム、などでも使用されています。
中国で開発された細胞培養弱毒生ワクチン(Japanese Encephalitis Vaccine, Live)が世界保健機関(WHO)で認可されています。このワクチンは1〜2回の接種で長期間の免疫が得られる様です。1989年以来、中国国内で2億人以上の小児に接種され、最近、インド、ネパール、タイ、韓国、スリランカなどで使用が始められたようです。
日本脳炎ワクチンの効果は明らかです。日本では定期予防接種の開始後、急激に患者発生が減少し、1960年代の終わりから日本脳炎の流行が阻止されています。韓国でも同様に日本脳炎の流行が阻止されています。最近、急性散在性脳脊髄炎(Acute Disseminate Encephalomyelitis, ADEM)が約200万回の接種に1例、疑わしい症例を含めると約70万回に1例の頻度で発生していることが明らかになり、ワクチンとの関連が確定したわけではありませんが、小児の患者発生が無いこと、新しい細胞培養不活化ワクチンの実用化が近いことなどを理由にして、2005年5月に、積極的な勧奨接種から希望者に対する接種に変更されました。この措置によりワクチン需要が激減し、一時、阪大微生物病研究会以外の業者が製造を中止しました。細胞培養製品の認可が遅れているために、最近、北里研究所などが製造を再開した様子です。阪大微生物病研究会は、国内用の液状製剤と輸出用の凍結乾燥製剤を製造しています。液状製剤には防腐剤としてチメロサールが添加されていますが、塩化アルミニウムなどの免疫増強剤は添加されていません。
日本脳炎ワクチンの接種対象は生後6か月以上です。接種量は、3歳未満は0.25mL、3歳以上は0.5mLです。接種部位は皮下です。1〜4週間隔で2回接種を受け、1年後に3回目を受けます。その後は5年毎に追加接種を受けます。日本脳炎ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。
感染防御に有効な血中中和抗体価は10倍とされています。添付文書には2回接種後の抗体陽転率は98%、平均中和抗体価は700倍と記載されているので、2回受けた後の予防効果は1年以上持続すると考えられます。100人に1人程度の頻度で、注射局所の発赤、腫脹、痛みとか、頭痛、発熱などの全身反応が現われることがあります。いずれも軽症で、通常、2〜3日で治まります。発疹、蕁麻疹、紅班などの過敏症状は稀です。重大な副反応とされているADEMとかアナフィラキシー様症状などは極めて稀です。
日本脳炎の流行地は、西はパキスタン、北はサハリン、南はオーストラリア北部のクイーンズランド州までの範囲です。日本では夏が流行期ですが、熱帯地域では年中発生し、特に雨季に多発します。農村部への旅行者には予防接種が必要です、滞在者、バックパック旅行者、エコツアーの参加者などには特にお勧めです。

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破傷風トキソイド(Tetanus Toxoid、TT)
 

この製剤は、破傷風菌の培養液から毒素(テタノトキシン)を抽出精製して作られています。ホルマリン処理により毒素液を無毒のトキソイド液に換え、免疫誘導力(力価)を強化するためにアルミニウム塩を加えた製品です。多数の国で作られていますが、国内の製造業者は、北里研究所、武田薬品、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の5社です。日本では1952年から本剤が使用されています。その後、ジフテリアトキソイド(D)、百日咳ワクチン(P)などと混合した二種混合ワクチン(DT)とか三種混合ワクチン(DTP)が作られました。0.5mL中の破傷風トキソイド含量は5Lfです。
破傷風トキソイドの対象は生後3か月以上です。接種量は0.5mLです。接種部位は皮下又は筋肉内とされていますが、沈降製剤なので筋肉内接種の免疫効果が優れています。接種は3回受けます。最初の2回は3〜8週間隔です。3回目は初回から6か月以上の間隔を空け、通常、12〜18か月の間に受けます。但し、1968年以降に生れ、小児期にDTとかDTPの接種を受けている人は、追加接種を1回受ければ十分です。新生児破傷風の予防目的で妊娠中に接種を受ける場合には、妊娠20〜36週の間が望ましいとされています。破傷風の発病阻止に有効な抗毒素抗体価は、血液1mL当り0.01 IU以上とされています。添付文書には、4回週間隔、2回接種後の有効抗体保有率が、4週後は約90%であったこと、以後は経時的に低下したこと、6〜15か月後の追加により抗体価が上昇し、4〜5年間維持されたこと、などが記載されています。感染の危険性が高い職場では5年毎に追加が行われますが、一般には10年毎で良いとされています。破傷風トキソイドの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合は1週間以上空けます。
破傷風トキソイドによる重大な副反応はありません。注射部位の発赤、腫脹、痛み、などの局所症状、発熱、悪寒などの過敏症状、頭痛、倦怠感などの全身症状が現われることがあります。頻度は100人に1人未満で、2〜3日で治ります。
破傷風菌は世界中の土壌に芽胞の形で潜んでいます。傷口から感染し、菌が産生する毒素により強直や痙攣が起きる、危険な病気です。気付かない程度の些細な傷から感染することがありますが、予防接種により発病を阻止できるので、全ての人にお勧めです。不慣れな地域への旅行者、赴任者などには特にお勧めです。

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精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(Diphtheria and Tetanus Toxoid, with Acelluler Pertussis Vaccine、DTaP)
 

通称は三種混合ワクチンです。初期の三種混合ワクチンは沈降ジフテリアトキソイド、沈降破傷風トキソイド、全菌体百日咳ワクチン(Whole cell Pertussis Vaccine)の混合ワクチンでしたが、副反応を軽減するために精製百日咳ワクチンを混合した製品として日本で最初に開発されました。北里研究所、武田薬品、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の5社が製造しています。外国のInfanrix(GlaxoSmithKline Biologicals)、Tripedia (Sanofi-Aventis)なども日本の技術を利用して同様の製品を製造しています。1回の接種量(0.5mL)中に、ジフテリアトキソイド15Lf、破傷風トキソイド2.5Lf、精製百日咳ワクチン4国際単位(IU)が配合されています。
本剤は定期勧奨接種用で、生後3〜90か月未満の対象者に皮下接種します。標準的な接種時期と回数は、生後3〜12か月の間に3回、生後18〜24か月の間に追加1回の計4回です。外国では、接種部位は筋肉内で回数は3〜5回です。例えば、米国では、生後2か月、4か月、6か月、15〜18か月、4〜6年の5回行われます。
1:百日咳菌に対する感染防御レベル以上の抗体獲得、及び、約70%の家族内二次感染の防御効果、2:ジフテリアと破傷風に対する感染防御レベル以上の抗体獲得などにより本剤の有効性が確認されています。抗体は2回目の接種後に出現し、4週後に感染防御レベル以上に上昇します。その後は抗体価が徐々に低下するので、3回目接種と追加接種が必要です。三種混合ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。 三種混合ワクチンの接種後に、発熱、不機嫌、注射部位の発赤などの副反応が現われることがあります。初回接種後24時間以内の発熱(37.5℃以上)は100人あたり1人未満です。注射部位の、発赤、腫れなどは5人程度です。いずれも2〜3日で消えますが、注射部位にしこりが出来た場合は1か月程度消えないことがあります。これらの副反応は、通常、接種回数が増えると頻度が高くなります。アナフィラキシー様症状、急性血小板現象性紫斑病などの重大な副反応は極めて稀です。
日本では1968年に全菌体百日咳ワクチン(Whole cell Pertussis Vaccine、wP)が混合された三種混合ワクチン(DTwP)の使用が開始されました。1970年代にwPによるとされる脳症などの重篤な副反応が問題になり、接種が中断される事態になりました。その後、1981年に精製百日咳ワクチンを混合した新ワクチンが導入され、問題が解決した経緯があります。精製百日咳ワクチンは国際的には無細胞百日咳ワクチン(Acellular Pertussis Vaccine、aP)と呼ばれ、1990年代からaPを混合したDTaPが世界各国で使用される様になりました。しかしDTaPは製造法が難しく高価なために多くの途上国ではDTwPが使用されています。最近、沈降ジフテリアトキソイド(D)とaPを減量した大人用の新三種混合ワクチン(Tdap)が開発されました。2005年からBoostrix (GlaxoSmithKline Biologicals)、AdacelとDecavax (Sanofi-Aventis.)のなど新製剤が米国などで10歳以上の追加接種に使用されています。

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ジフテリア破傷風混合トキソイド(Diphtheria and Tetanus Toxoid Children’s Dose, DT)
 

通称は二種混合ワクチンです。日本では北里研究所、武田薬品、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の5社が製造しています。以前は乳児期の予防接種と11〜12歳の追加接種に兼用されていましたが、現在は主に追加接種に使用されています。海外ではジフテリアトキソイドを減量したTdと呼ばれる追加接種専用の二種混合ワクチンが10歳以上に使用されています。最近、米国などで無細胞百日咳ワクチンを減らしたTdapが認可され、Boostrix (GlaxoSmithKline Biologicals)、Adacel(Sanofi-Aventis)などのTdap製品が使用されています。海外留学とか現地校に編入学の際にTdとかTdapの追加接種が必要なことがあります。日本ではTdもTdapも認可されていないので、通常、DTが使用されます。DT製剤は0.5mL中にジフテリアトキソイド25Lfと破傷風トキソイド5Lfを含有し、免疫増強剤として塩化アルミニウム、防腐剤としてチメロサールなどが添加されています。
本剤の対象は生後3か月以上です。接種量は、10歳未満は0.5mL、10歳以上は0.1mLです。下の表に各種製剤に含まれる1接種量中の抗原量が比較されています。ジフテリアトキソイドの接種量は10歳未満が25Lf、10歳以上が5Lfなので、適合しますが、破傷風トキソイド5Lf、及び、1Lfになり、5分の1量になります。接種部位は皮下とされていますが、抗体産生は筋肉内の方が良好です。二種混合ワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。

種類 接種対象 一回量
(mL)
百日咳
防御抗原
ジフテリア
トキソイド
破傷風
トキソイド
三種混合
(TDaP)
10歳未満 0.5 4.0IU 15Lf 2.5Lf
成人用三種混合
(Tdap)
11歳以上 0.5 PT:1/10量、
他は同量
2.0Lf 5.0Lf
成人用二種混合
(Td)
11歳以上 0.5 - 5.0Lf 5.0Lf
二種混合(DT) 10歳未満 0.5 - 25Lf 5.0Lf
二種混合(DT) 11、12歳 0.1 - 5.0Lf 1.0Lf
成人用ジフテリア
トキソイド
(Dif) 
11歳以上 <0.5 - <2.5Lf -
沈降破傷風
トキソイド
(TT) 
生後3月以上 0.5 - - 5.0Lf

添付文書には、生後3〜23か月の乳児を対象とする試験により、2回接種後に、ジフテリアと破傷風に対する抗体が感染防御レベル以上に上昇したと記載されています。11歳と12歳時の追加接種後の有効性は記載されていません。感染防御レベル抗体の詳細は個別ワクチンの項を参照してください。本剤の接種後に、発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状とか、注射部位の発赤、腫れ、痛みなどの軽い副反応が現われる場合がありますが、頻度は希で、通常、2〜3日で消えます。ショック、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)は極めて稀です。

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インフルエンザワクチン(Influenza Vaccine)
 
1.インフルエンザHAワクチン(Trivalent inactivated influenza vaccine、TIV)

インフルエンザウイルスは、本来、野鳥のウイルスです。野鳥からニワトリなどの家禽に感染して大量死が起きることがありますが、稀に種を超えてブタとかヒトに伝播することがあり、突然変異によりヒトのインフルエンザウイルスが誕生すると考えられています。ヒトのインフルエンザウイルスはA、B、Cの抗原型に大別されています。A型とB型は流行性ですがC型は散発性です。ウイルス粒子の表面にHとNの2種類の亜型抗原があり、A型ウイルスでは、Hが15種類、Nが9種類に細分されています。インフルエンザウイルスの血清型は非常に多いので、流行ウイルス型が毎年の様に変化します。この変化に対応するために、世界保健機関(WHO)を中心とする監視システムが作られ、世界中の動物とヒトの感染ウイルスの動向を参考にして、毎年、A型2種類とB型1種類のワクチン株候補が選定されます。3種類のウイルス株を孵化鶏卵で増やし、精製不活化して3価ワクチンが製造されています。インフルエンザワクチンには不活化された精製ウイルス粒子のワクチン(Whole virion vaccine)と精製ウイルス粒子をエーテル処理により分解し、ウイルス粒子表面の血球凝集素(HA)を集めて作られる、HAワクチン(HA vaccine)があります。日本では北里研究所、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の4社がHAワクチンを製造しています。日本の製品は0.5mL中に各ウイルス株のHA蛋白量を15マイクログラム(mcg)宛て含有しています。
生後6か月以上がインフルエンザワクチンの接種対象です。接種部位は、日本では皮下接種ですが、外国では筋肉内接種です。接種量は年齢により異なり、1歳未満0.1mL、1〜5歳0.2ml、6〜12歳0.3mL、13歳以上0.5mL、とされています。回数は1〜4週間隔で2回ですが、10歳未満の幼児を除き、毎年接種を受けている場合には1回でよいとされています。インフルエンザHAワクチンの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合には1週間以上空けます。 インフルエンザHAワクチンの効果は限定的です。インフルエンザウイルスは鼻腔粘膜から感染します。粘膜感染の防御には鼻汁とか唾液中に分泌されるIgA抗体が有効ですが、HAワクチンが作る抗体は血中IgG抗体なので粘膜感染の防御は期待できません。しかし流血中のウイルスを中和するので症状を軽減する効果があります。集団防衛については賛否両論がありますが、個人防衛には有効と結論されています。
インフルエンザHAワクチンには重い副作用はありません。注射局所の、発赤、腫れ、痛みなどが現われることがありますが、頻度は100人に10人程度以下で、2〜3日で消えます。蕁麻疹などの過敏反応は稀です。添付文書の副反応の欄に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの重い病気が記載されていますが、頻度は皆無に近いと考えられます。
インフルエンザは毎年冬に流行する急性感染症です。特に海外渡航用の予防接種ではありませんが、接種を受けていれば渡航先での感染・発病を軽減できます。幼児、高齢者、免疫機能の低い人などはご出発前に受けるのが良いと思います。因みに、日本では65歳以上の高齢者に奨励されています。

2.経鼻インフルエンザワクチン

粘膜防御を目的とした弱毒生ウイルスの鼻腔内スプレーワクチンです。MedImmune VaccinesのFluMistと呼ばれる製品が米国で認可されています。米国では鼻腔内ワクチンとスプリット型ワクチンの適用が年齢で区別されています。スプレーワクチンの適用は5〜49歳、3価スプリットワクチンは5歳未満と50歳以上とされています。

3.トリインフルエンザワクチン(Avian flu type AH5N1 vaccine、Avianflu)

新型インフルエンザの流行に備えて開発され、備蓄されています。

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ヘモフィリスインフルエンザb型ワクチン(Heamophilis type b Conjugate Vaccine、Hib)
 

ヘモフィリスインフルエンザ菌は小児に感染すると髄膜炎や肺炎などを起すことがあります。ヘモフィリスインフルエンザ菌による患者の大部分はb型菌によるために、Hibワクチンが開発されました。このワクチンはHib菌の莢(きょう)膜多糖体を分離精製して担体蛋白と結合させたワクチンです。肺炎球菌外膜蛋白を担体蛋白とした結合ワクチン(PRP-OMP)2種類(製品名:PedVaxHIBとComVax〔MERK〕)と新三種混合ワクチン(DTaP)を担体蛋白とした結合ワクチン(DTaP/Hib)の3種類が米国などで認可され、小児の定期接種が行われています。対象は生後6月未満の乳児です。日本では幼児のHib菌感染症が少ないためなのか、長年認可されていませんでしたが、最近、認可に向けた臨床試験が行われている様子です。

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髄膜炎菌ワクチン(Meningococcal vaccine)
 
1.髄膜炎菌多糖体ワクチン(Meningococcal polysaccharide vaccine, MenA_ps、MenAC_ps、MenACWY_ps)

このワクチンは日本では認可されていません。A群単味ワクチン(MenA_ps)、A群とC群が混合された2価ワクチン(MenAC)、A群、C群、W-135群、Y群が混合された4価ワクチン(MenACWY、MSPV4)などがあります。これらの多糖体ワクチンは、2歳以上の小児の定期接種、流行時の予防接種、旅行ワクチンなどに使用されています。Menomune-A/C/Y/W-135 (Sanofi-Aventis)、ACWY Vax (GlaxoSmithKline Biologocals)などの4価ワクチン主な製品です。ワクチン液1mL中に各4種類の多糖体が100マイクログラム(mcg)宛て含む様に配合され、凍結乾燥されています。
このワクチンは2歳未満の幼児には効果がないので、適用は2歳以上とされています。接種直前に同梱の注射用水で溶解し、0.5mL(50mcg)を皮下に注射します。接種回数は、通常、1回です。抗体持続期間は約2年間です。強い副反応はありません。注射局所の発疹、腫脹、痛みなどが起きることがありますが、1〜2日で直ります。38℃以上の発熱、頭痛、倦怠感などの頻度は100人に3人以下とされています。

2.結合型髄膜炎菌ワクチン(Meningococcal conjugate vaccine, MenC_conj、MenACWY_conj, MCV4)

このワクチンは日本では認可されていません。精製されたC群菌の多糖体を破傷風トキソイド、ジフテリア菌CRM197蛋白(無毒素活性変異毒素)、Hibワクチンなどと共有結合させたワクチン(MenC_conj)と、個別に製造したA群、C群、W-135群、Y群などの多糖体と破傷風トキソイドとの結合物を混合した4価ワクチン(MCV4)の2種類があります。
MenC_conjにはMeningitec(Wyeth Laboratories Inc)、Menjugate(Novartis Vaccines)、NeisVac-C(Shire Biologics)、Hib/MenC(GlaxoSmithKline Biologicals)などの製品があります。MenC_conjは2歳未満の幼児の抗体産生が良好なので、多数の国で2歳未満の定期接種に採用されています。接種回数は年齢により異なります。生後2か月から開始する場合は、通常、4週間隔で3回行われますが、生後3か月から開始する場合は4週間隔で2回、1歳以上は1回とされています。
MCV4は1社が製造しています。Sanofi-AventisのMenactraと呼ばれる製品が使用されています。MCV4の適用は11歳以上で、接種回数は1回です。米国では、高校生、大学生などのハイリスク群に使用され、最近、日本からの留学生が接種を受ける様に指示されているようです。MCV4はアフリカ方面への旅行ワクチンとしても利用できると思われます。

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肺炎球菌ワクチン
 
1.23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(Pneumococcal polysaccharide vaccine、PPV, Pneumo_ps)

日本では米国Merck 社の製品を万有製薬が「ニューモバックスNP」という名称で販売しています。肺炎球菌は菌体表面の多糖体により多数の抗原型(莢膜型)に分かれていますが、病気を起しやすい型と起こしにくい型があります。このワクチンは病気を起しやすい23種類(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33F)の菌型を個別に培養し、培養液から莢膜多糖体を抽出・精製して混合した23価ワクチンです。接種量0.5mL中には各型の莢膜多糖体が25マイクログラム(mcg)宛て配合されています。莢膜多糖体の全量は575mcgになります。
このワクチンは2歳以上に使用されます。対象者は、脾臓摘出患者、脾臓機能不全患者、心肺の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患のある患者、高齢者、免疫抑制を伴う治療を予定している患者、その他の肺炎球菌による感染症の予防希望者などです。保険適用は脾臓摘出患者に限られます。接種部位は上腕部の筋肉内又は皮下です。接種量は0.5mLです。ニューモバックスの接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合は1週間以上空けます。添付文書には追加時期は明示されていません。日本では1回使用とされていますが、米国では、10歳未満は3年後、10歳以上は5年後に追加が行われます。
このワクチンには肺炎球菌感染症の予防効果があります。添付文書には、接種後に2.7〜6.8倍(平均4.4倍)の抗体価上昇が認められたこと、各型別の抗体上昇率は73〜100%(平均89%)であり、良好な抗体反応が得られたことなどが記載されています。
主な副反応は、注射部位の痛み、疼痛、腫脹、発赤などで、頻度は100人に10人程度です。注射部のしこり、筋肉痛、倦怠感、頭痛、発熱などは5人未満とされています。しこりが現われた場合には消えるまでに1〜2週間かかりますが、他の症状は2〜3日で消えます。重い過敏反応は殆どありません。
肺炎球菌多糖体ワクチンは旅行ワクチンではありません。高齢者は肺炎球菌感染症を起こし易いとされています。ペニシリン治療が行われていますが、最近、耐性菌感染が増加しています。65歳以上の人は、旅行の有無に限らず、受けておきたい予防接種です。

2.結合型肺炎球菌ワクチン(Pneumococcal conjugate vaccine、PCV, Pneumo_conj)

日本では認可されていません。Wyeth Laboratories IncのPrevnarが小児の定期予防接種用として採用され、多数の国で使用されています。このワクチンは、幼児感染の頻度が高い7種類の莢膜型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)肺炎球菌が混合された製品です。7種類の個別培養液から抽出精製された莢膜多糖体の各々を還元的アミノ化反応によりキャリアー蛋白と共有結合させ、混合した製品です。キャリアー蛋白はCRM197と呼ばれるジフテリア菌C7株の無毒変異毒素です。接種量0.5mL中の莢膜多糖体含量は、6B型以外は、2mcgです。6B型は4mcg添加されているので、多糖体の全体量は125mcgです。本剤はアルミニウム塩が添加された沈降製剤です。
Prevnarは生後2か月以上が接種対象です。生後2か月、4か月、6か月の3回接種を受け、更に、12〜15か月の間に追加接種を受けます。臨床試験では、3回接種後に全ての型に対する抗体が陽転し、4回目の接種により抗体価が有意に上昇しています。肺炎球菌による敗血症、髄膜炎、肺炎、などの全身性(侵襲性)感染症の予防効果は90%以上です。ワクチンに含まれる7種類の莢膜型菌に限定すれば100%です。また肺炎球菌による中耳炎の予防効果は、型を問わない場合は34%、ワクチンに含まれる型に限定すれば57%です。
副反応は軽度です。接種部位の発赤、腫脹などが4人に1人程度、38℃以上の発熱が5人に1人程度に認められるが、重い副作用はないとされています。Prevnarは日本では認可されていませんが、外国で子育てをなさる場合には接種を勧められることがあります。

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ダニ媒介性脳炎ワクチン(Tick-born Encephalitis Vaccine、TBE, FSME)
 

東はシベリアから西はドイツまでの森林地帯ではマダニが媒介する脳炎に感染するリスクがあります。流行季節は春先から初夏の期間です。8月に流行が終わります。流行期にこの地域の森林に入られる場合には、肌が露出しないように長袖とか長ズボンを着用し、露出部にはDEET入りの昆虫忌避剤(日本製品:ムシペールα)をスプレーするように勧告されています。2種類の精製不活化ワクチンが欧州とカナダで認可されています。Baxter-ImmunoのFSME-IMMUNとChiron BehringのEncepurです。両者共にニワトリの胚培養細胞が利用して製造され、ロシア春夏脳炎と中部ヨーロッパ脳炎の両方に予防効果ありとされています。FSME-IMMUNの適用年齢は4歳以上です。Encepurには小児用と大人用があり、小児用の適用は1-11歳、大人用は12歳以上です。
接種回数は3回です。通常、3週から3か月の間隔で2回接種を受けますが、急ぐ場合には15日間隔でも差支えが無いとされています。3回目は2回目の9〜12か月後です。2回受けた後の効果は90%程度とされています。3回受けた後は100%になり、効果は3年間持続します。熱性けいれんの既往者、アレルギー体質者などは要注意者です。頭痛、発熱、だるさ、心拍の異常、発疹、皮膚の異常感覚、悪心嘔吐、めまい、関節痛、筋肉痛、リンパ腺腫脹、注射部位の腫脹と痛み、などの軽い副反応が現われることがあります。予防接種による発熱は、通常、24時間以内に現われ2〜3日で正常化します。
これらのワクチンは日本で認可されていません。外国では、欧州連合域内、カナダ、ロシアなどで受けられるようですが、現地で2回目まで済ませるためには15日以上滞在する必要があります。ダニの生息地でお仕事をされる人にお勧めです。

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腸チフスワクチン(Typhoid Fever Vaccine、Typhoid)

経口生ワクチン(Ty21a)と莢膜多糖体(ViCPS)ワクチンがあります。日本では許可されていませんが、世界中で多くの旅行者に使され、有効性と安全性が確認されています。東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、中近東、アフリカ、中南米、東欧、オセアニア島嶼などへの旅行の際に必要です。

莢膜多糖体(ViCPS)ワクチン

GlaxoSmithKline社のTypherixSanofi Pasteur社のTyphim Viがあります。これらは腸チフス菌Ty2株を培養して菌体の外側に存在するVi抗原と呼ばれる多糖体を抽出・精製したものです。ワクチン液0.5mL中のVi抗原含量は25マイクログラム(mcg)で、防腐剤として0.25%のフェノールが添加されています。接種対象者は2歳以上、接種量は0.5mL、接種部位は上腕部筋肉内です。接種を受けた人の88%以上に2週後から抗体が現れ、約2年間持続します。腸チフスの発病阻止効果は74%以上とされています。100人に5人程度の頻度で注射を受けた場所に赤い腫れ、痒み、痛み、しこりなどの症状が現われることがあります。まれに、腹部の違和感、吐き気、発疹、蕁麻疹などの副反応が現われることがあるとされています。重大な副反応は報告されていません。
抗体上昇が接種の2週後から始まり、約2年持続することから、流行地に入る2週前の接種と2年毎の追加が推奨されています。
経口生ワクチン(Crucell Switzerland社のVivotif)
弱毒腸チフス菌Ty21a株を培養・精製し、2x109個の生菌をエンテリックコートカプセルに封入した製剤です。エチレングリコール、蔗糖、ビタミンCその他の安定剤が添加されています。一般向けの1箱3カプセル入りの他に北米限定の4カプセル入りがあります。対象者は6歳以上です。1日おきに3回、空腹時に冷水又はぬるま湯を用いて飲み込みます。食事は服用から1時間以上経過後に摂ります。エンテリックコートカプセルは胃を通過し腸内で溶けます。腸内で菌が増殖して免疫効果を生みますが殆ど排泄されません。服用終了の約1週後から免疫効果が現れるとされているので、出発の2週前から服用を開始する必要があります。3カプセル服用後の発病阻止効果は70%、免疫持続は3年以上、追加は3年毎に3カプセルとされています。4カプセル服用後の追加は、米国では5年後、カナダでは7年後とされています。腹痛、下痢、吐き気、食欲減退、発熱、頭痛、発疹などが現れることがあるが何れも軽症、頻度は100人に1人程度とされています。健康人の場合は重大な副作用は無いとされています。

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ポリオワクチン(Polio Virus Vaccine)
 
1.経口ポリオワクチン(Oral Poliovirus Vaccine、OPV)

セイビン博士が開発した1型、2型、3型の弱毒株が混合された3価ワクチンです。日本では(財)日本ポリオ研究所が製造しています。日本では1961年の予防接種の開始から野生ウイルスによる麻痺ポリオが激減し、1981年以降は全く発生していません。ポリオ絶滅事業により世界中の麻痺ポリオの発生が少なくなり、現在の常在地はインドの一部とアフリカ中央部の一部の国だけになりました。野生ポリオの絶滅に成功した国でも常在地からの輸入ポリオの危険があります。例えば2005年にインドネシアで、突如、多数の麻痺ポリオが発生し、患者から分離されたウイルスの遺伝子検査により、アフリカから持ち込まれたウイルスによることが明らかにされました。
経口ポリオワクチンは 1回の接種量が0.05mLですが、1瓶に1mL分注された多人数用の製品が作られています。1接種量0.05mL中に含まれるウイルス感染価は、1型が30〜300万、2型が3〜30万、3型が10〜100万です。主な添加物は白糖、塩化マグネシウム、ゼラチンなどです。他に、細胞培養液に由来するストレプトマイシンなどの添加物が微量含まれています。保存温度は-20℃以下で、融解後の再凍結は禁止されています。融解後は、4〜10度で1週間、0〜4℃で30日間、保存可能とされていますが、開栓後の保存は禁止されています。1回の接種量は0.05mLで、専用のスポイドを使用して経口的に行われます。接種回数は2回で、時期は春と秋です。1回目と2回目を連続して受ける場合には6週間以上の期間を空ける必要がありますが、他の予防接種は4週以上で受けられます。 2回接種後の抗体陽転率は、1型と2型が95%以上、3型は80%以上です。抗体が長年持続するので、追加接種は不要とされています。4回以上の接種により全ての血清型に対する抗体陽転率が100%に達しますが、わが国では定期接種は2回とされています。しかし春と秋の接種時期を外して受けた場合、特に夏季に受けた場合には、3回以上の接種が必要になります。また1975〜1977年生れの人は1型に対する抗体陽転率が異常に低いために追加が必要とされています。
副反応は殆どありません。ポリオ様の麻痺症状の発生は極めて稀で、頻度は200万人に1人以下です。免疫機能が低下した人が接種を受けると持続感染状態になり、経過中に神経毒が増強した変異ウイルスが出現して麻痺が発症するとか、2次感染による麻痺ポリオの危険があります。幼児が接種を受けた場合には、100人あたり1〜5人の頻度で下痢、発熱、嘔吐などがみられていますが、ワクチンによるものか否か不明です。
海外渡航に際して特に必要ではありませんが、日本以外の国では3回以上の接種が行われているために、学校などに編入学する際に、3回目が要求されることがあります。

2.不活化ポリオワクチン(Inactivated Poliovirus Vaccine、IPV)

日本では認可されていません。「セイビン株が枯渇する心配があるが、セイビン株に代わる優れた弱毒ワクチン株が存在しない。ワクチン接種後に極めて稀であるが麻痺症例が発生する。」などのために、不活化ワクチンが開発され、多くの国で使用されています。

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麻疹ワクチン(Measles Vaccine、Measles)
 

麻疹ワクチンは弱毒生ワクチンです。日本では3社が麻疹ワクチンを製造しています。全てニワトリ初代胚培養細胞で種ウイルス株を増やし、ウイルス液を精製し、安定剤を加えて凍結乾燥した製剤です。1回の接種量0.5mL中に含まれる感染性ウイルス量は5000TCID50以上です。安定剤として、乳糖、ソルビトールなどの糖類とアミノ酸が添加されています。接種後のアナフィラキシーショックの原因物質であるゼラチンは添加されていません。麻疹ワクチンは主に幼児の予防接種に使用されています。2006年から麻疹と風疹の定期接種が混合ワクチン(MR)の2回接種に変わりました。
使用直前に添付されている注射用蒸留水0.7mLを加えて溶解し、0.5mLを上腕皮下に接種します。定期勧奨接種は、生後12か月から24か月に至るまでの間(第1期)、5歳以上7歳未満(第2期)の2回です。任意接種には年齢制限はありません。
麻疹ワクチン接種後の免疫獲得率は95%以上とされています。しかしワクチン接種者が稀に麻疹に罹患することがあり、抗体が付かなかった場合と付いた抗体が弱かった場合が想定されています。2回接種により麻疹が撲滅されることが分かり、多くの国で4〜5年後に再接種が行われています。日本でも2006年から2回接種が開始されました。
麻疹ワクチン接種後の重大な副反応として、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫などを伴うショック、アナフィラキシー様症状、急性血小板現象性紫斑病などの過敏症とか脳炎が挙げられていますが、頻度は極めて稀です。麻疹ワクチンは生ワクチンなので、接種後、数日から2週間の間に、発熱、不機嫌、食欲減退、咳、発疹などの軽い麻疹様の症状が発生することがあります。発熱は接種後7〜12日頃を中心に認められ、時に38.5℃以になることがあり、熱性痙攣に対する注意が必要です。添付文書によれば、発熱の頻度は10〜20%、有熱期間は1〜2日、随伴症状の持続は2〜3日とされています。健常児の場合は、ワクチンウイルスは唾液中に排泄されないので、2次感染を起こすことはありませんが、免疫機能が低い人は、ウイルス感染の増強とか持続による弊害が発生する危険があります。
麻疹の予防接種後に他の予防接種を受ける場合は4週間以上あける必要があります。輸血又は免疫グロブリン製剤の投与を受けた場合には、3か月以上経過している必要があります。海外渡航時には特に必要な予防接種ではありませんが、留学とか現地校に編入学の際に追加接種が要求されることがあります。

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風疹ワクチン(Rubella Vaccine、Rubella)
 

風疹ワクチンは幼児の定期予防接種に使用されている弱毒生ワクチンです。以前は単独ワクチンが使用されていましたが、2006年から麻疹と風疹の混合ワクチン(MR)の2回接種に代わりました。 風疹ワクチンはウサギ腎培養細胞又はウズラ胚培養細胞で種ウイルス株を増やし、ウイルス液を精製し、安定剤を加えて凍結乾燥した製剤です。1回接種量0.5mL中に含まれる感染性ウイルス量は1000TCID50以上です。安定剤として、乳糖、Lグルタミン酸ナトリウムなどが添加されています。接種後のアナフィラキシーショックの原因物質とされたゼラチンは、現在の製品には添加されていません。
本剤は凍結乾燥製剤です。接種の直前に添付されている注射用蒸留水0.7mLを加えて溶解し、0.5mLを上腕皮下に接種します。定期勧奨接種は、生後12か月から24か月に至るまでの間(第1期)、5歳以上7歳未満(第2期)の2回です。任意接種には年齢制限はありません。接種後の抗体陽転率は91%以上です。100%とした製品もあります。抗体の持続期間は17年以上とされていますが、麻疹と同様に、4〜5年間隔の2回接種が行われます。 本剤の接種後に、ショック、アナフィラキシー様症状、急性血小板現象性紫斑病などの重大な副反応が現われることがあるとされていますが、頻度は極めて稀です。風疹ワクチンは生ワクチンですが、接種後に風疹様の症状が現われることは無いようです。接種直後から数日中に、発疹、蕁麻疹、発熱などの過敏症状とか、注射を受けた場所の発赤とか腫れが現われることがありますが、頻度は少なく、現われた場合も、2〜3日で消えます。健常児の場合には、ワクチンウイルスは唾液中に排泄されないので、2次感染を起こすことはありませんが、免疫機能が低い人は、ウイルス感染の増強とか持続による弊害が発生する危険があります。
妊娠初期に風疹に感染すると、心臓奇形、難聴、白内障などの疾患を持つ先天性障害児が出生することが知られています。風疹ワクチン接種後に先天性風疹症候群が発生することはないとされていますが、万一の障害児の出生を無くするために、妊娠可能な婦人の場合には、接種前の2か月間と後1か月間は妊娠を避けることとされています。
本剤の接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合は4週間以上あける必要があります。輸血又は免疫グロブリン製剤の投与を受けた場合には、3か月以上経過している必要があります。風疹の予防接種は、海外渡航時には特に必要ではありませんが、留学とか現地校に編入学の際に追加接種が要求されることがあります。

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麻疹・風疹混合ワクチン(Measles and rubella vaccine, MR)
 

定期予防接種ワクチンとして開発された麻疹ワクチンと風疹ワクチンの混合ワクチンです。日本では2007年から使用されています。

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おたふくかぜワクチン(Mumps Vaccine、Mumps)
 

おたふくかぜワクチンは弱毒生ワクチンです。日本では3社が製造していますが、全て、種ウイルス株をニワトリ胚初代培養細胞で増やして精製し、安定剤を加えて凍結乾燥した製剤です。1回接種量0.5mL中に含まれる感染性ウイルス量は5000TCID50以上です。添加物は、乳糖、D-ソルビトールなどの糖類と、L-グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸類などの安定剤です。現在の製品には、アナフィラキシーショックの原因物質とされているあるゼラチンは含まれていません。本剤は主に幼児期の予防接種に使用されています。外国では、麻疹ワクチン、風疹ワクチンなどと混合されたMMRワクチンが使用され、定期接種が2回行われています。日本では単独ワクチンが使用され、任意接種とされています。
おたふくかぜワクチンは乾燥製剤です。使用直前に添付されている注射用蒸留水0.7mLを加えて溶解し、0.5mLを上腕皮下に接種します。対象年齢は生後12か月以上です。ワクチン接種後の免疫獲得率は90%以上、家族内2次感染の阻止率は94%、1〜12年間のおたふくかぜ発症阻止率は99%とされています。 おたふくかぜワクチンの接種を受けると、1〜3週後に、発熱、耳下腺腫脹などの軽いおたふくかぜ様症状が現われることがあります。頻度は100人中2人乃至1人未満で、持続日数は2〜3日程度です。無菌性髄膜炎の発生頻度は、現在は12000人に1人程度です。ショック、アナフィラキシー様症状、急性血小板現象性紫斑病、などの重大な副反応は極めて稀です。接種直後から2、3日中に、1000人に1人以下の頻度で、発疹、蕁麻疹、発熱などの症状が現われることがあります。また、100人に5人程度、注射を受けた場所に発赤とか腫れなどが現われることがあります。これらの症状は、通常、2〜3日で消えます。健常児の場合には、ワクチンウイルスは唾液中に排泄されないので、2次感染を起こすことはありませんが、免疫機能が低い人は、ウイルス感染の増強とか持続による弊害が発生する危険があります。
本剤の接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合は4週間以上あける必要があります。輸血又は免疫グロブリン製剤の投与を受けた場合には、3か月以上経過している必要があります。風疹の予防接種は、海外渡航時には特に必要ではありませんが、留学とか現地校に編入学の際に追加接種が要求されることがあります。

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水痘ワクチン(Varicella vaccine, Varicella)
 

水痘ワクチンは弱毒生ワクチンです。日本では(財)阪大微生物病研究会が製造しています。種ウイルス株をヒト2倍体細胞(MRC-5)で増やして精製し、安定剤を加えて凍結乾燥した製剤です。1回の接種量0.5mL中に含まれる感染性ウイルス量は1000TCID50以上です。主な添加物は安定剤として加えた白糖とL-グルタミン酸ナトリウムです。アナフィラキシーショックの原因物質とされているあるゼラチンは含まれていません。日本では単独ワクチンが製造されていますが、外国には麻疹、おたふくかぜ、風疹と混合した4種混合製剤(MMRV)も製造されています。
本剤は日本では任意接種ワクチンですが、米国などでは定期接種に組み込まれています。接種回数は、日本では1回受ですが、外国では2回とされています。また高齢者の帯状疱疹の予防にも使用されています。
水痘ワクチンは乾燥製剤なので、使用直前に、添付の注射用蒸留水0.7mLを加えて溶解し、0.5mLを上腕皮下に接種します。接種対象年齢は生後12か月以上です。ワクチン接種後の抗体陽転率は90%以上とされています。水痘ウイルスに対する細胞性免疫の上昇率も約90%とされています。 ショック、アナフィラキシー様症状、急性血小板現象性紫斑病、などの重大な副反応は極めて稀です。軽い発熱、発疹、注射部位の腫脹などの軽い副反応の発生頻度は約7%とされています。生ワクチンの特徴として、接種1〜3週後に現われる一過性の発熱、発疹を伴う軽いかぜ様の症状とか水痘様症状については、健康小児では100人中5人未満に軽い症状が認められ、急性白血病患者などのハイリスク群では約20%に水痘様症状が現われたとされています。免疫機能が低下している場合には、ウイルス感染の増強とか持続による弊害が発生する危険があります。胎児感染による奇形の発生を防止するために、妊婦に対する接種は禁止されています。また接種前1か月間と接種後2か月間は妊娠しないように注意することとされています。
本剤の接種を受けた後で他の予防接種を受ける場合は4週間以上あける必要があります。輸血又は免疫グロブリン製剤の投与を受けた場合には、3か月以上経過している必要があります。水痘の予防接種は、海外渡航時に特に必要とされていませんが、留学とか現地校に編入学の際に追加接種が要求されることがあります。

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黄熱ワクチン(Yellow Fever Vaccine)
 

黄熱ワクチンは弱毒生ワクチンです。17D由来株から製造されていましたが、1945年に世界保健機関(WHO)により世界各地で製造されたワクチンの有効性と安全性の比較調査が行われ、17D-204株がWHOシードロットとして選定されました。現在の黄熱ワクチンはWHOシードロットを1代継代した製造用シードロットから作られています。製造はWHOから承認された製造所に限定されています。日本には承認された製造所はありません。サノフィパスツール社(旧コンノート社)の製品が輸入されています。製造用シードロットを孵化鶏卵に接種し、増えたウイルスを精製後、安定剤としてD‐ソルビトールとブタ皮膚由来のゼラチンを加えて凍結乾燥した製品です。黄熱ワクチンの1回接種量(0.5mL)中には104.75PFU以上の感染性ウイルスが含まれます。接種部位は皮下です。日本では生後9か月以上が接種対象者で、検疫所と(財)日本険疫衛生協会診療所で受けられます。
黄熱は国際伝染病とされ、予防接種を受けた人には国際予防接種証明書が発給されます。現に黄熱患者が発生している国とか過去に発生したことがある国に入国する際には国際予防接種証明書が必要です。黄熱患者の発生がない国でも、ネッタイシマカなどの黄熱ウイルス媒介蚊と自然宿主であるサル類が生息している場合には、大部分の国がリスク国からの入国者に対し国際予防接種証明書を要求しています。予防接種の10日後から中和抗体が陽転します。陽転率は100%です。持続期間は35年以上と言われていますが、国際予防接種証明書の有効期間は接種10日後から10年間です。
黄熱ワクチン接種直後から1、2日の間に現われる早期の副反応は稀です。接種2−5日目から軽い感染による頭痛、筋肉痛などの症状が現われることがあります。頻度は100人に5人程度です。免疫機能が正常でない場合には脳炎(20万接種に1人程度)とか熱性多臓器不全(40万接種に1人程度)が現われることがあります。1945年から1992年に行われた大規模調査では、死亡1例と一過性脳炎17例が認められ、死亡1例が3歳児であったこと、13歳、6歳、7か月の3名を除く一過性脳炎の全例が生後4か月未満であったことなどから、WHOは免疫機能が未発達である生後6か月未満の幼児に対する接種を禁止しました。高齢者も免疫機能の低下による弊害発生の危険があります。添付文書には、25−44歳群と比較した重篤な副反応の頻度が、65−74歳群は12.3倍、75歳以上群は32倍であったとの報告が引用されています。
添付文書には記載がありませんが、種痘、破傷風トキソイド、DTP、麻疹ワクチン、BCG、IPV、B型肝炎ワクチンなどとの同時接種は支障がないとされています。黄熱の予防接種後に他の予防接種を受ける場合には4週以上空ける必要があります。

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ペストワクチン(Plague vaccine、Plague)
 

日本のペストワクチンは国立感染症研究所の製品です。一般には販売されていませんが、必要な場合には検疫所で受けることが出来ます。

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